人気ブログランキング | 話題のタグを見る

自分というもの

今日は朝まで撮るかもしれない。
家を21時過ぎにでて無線も入れず車を走らせる。
5月末から、British Airways、6月にDelta Airlineが羽田に戻ってきた。
明日のBAの上がりを狙うのだ。

いつもの角を曲がった辺り。なぜか頭がかっとアツくなってきた。
気分が悪いわけでなく、衝動のようなもの、抑えられない気持ち。
なぜだかではない。理由はちゃんとわかっているんだ。

すこしボーッとしながら、考えながらいつもよりかなり遅いスピードで車を走らせる。
多摩川をわたり、ランディングの明かりがみえた。RWYは34だ。ここまでは予定通り。

羽田は予報どおり夜の靄に包まれている。ぐるっとまわってD滑走路の展望台横にきた。
音がしない、誰もいない。暗い。 雑音まじりの無線の音が明かりの代わりか。

少なくなった着陸機を遠めにみながら、ゆっくりFA★300mmレンズをすえつける。
フードが1回でつけられない。なにやってるんだ!

レンズが、はるかに重い。ピントもぶれも止まらない。ファインダーが曇って見えない。。
自分というもの_c0101927_147437.jpg




静寂の中に飛行機がスポットライトをあてている。
自分には周りがみえてるのかな。ふとおもう。
ただ写し続けるということだけ、それだけを頼りにシャッターをきってきた。
だけど悔しさがこみ上げてくる。

"伝わらない、伝えられない"という"悔しさ"。

立てた三脚を何度も組みなおし、危うく雲台のノブを間違えそうになる。
一度、ねじからはずし、もう一度、構えなおす。
ぎりぎりの気持ちをはぐらかすように、ピークの飛行機はもう全部降りてしまったようだ。
左手でフードをなでまわしながら、苦笑いしてその場にしばらく立っていた。
飛んでこない飛行機が悪者になった。
自分というもの_c0101927_1593696.jpg



なぜ撮っている?誰に見てほしい。お前の写真で人の心は動くのか。
そう思ったら、構えすら出来なくなった。

写真だけじゃない、あんたの表現、表し、伝える気持ち、真摯、思い、丹念さ、信頼、焦り、不安。
思いを伝える言葉や文字は軽くないのか。

イメージし、素直な気持ちでファインダをみてる時のように、清々しく、
今、まわりは見えているか。 すべてを誤解し、傲慢にあいまいなままでいないか。。。
自分というもの_c0101927_1554123.jpg



写真から感じるものは自由。飛行機の写真でも、誰でも知っているジャンボだけではない。
自分にいいイメージができて、納得のいく写真が撮れても、見る人が同じであるわけがないんだ。 
自分というもの_c0101927_929779.jpg



写真に何かを押しつけていないか。
いい機材であれば、自分の気持ちや技術までも何とかしてくれると。
昨日の自分と違いはないか。写らないものを写そうとしていないか。
そもそも伝わらないものを、無理やり伝えようとしていないか。

たくさんの人と接し、かけがえのないその人たちに、何を表現しているか。
写真のすばらしさ? 否、自分の思いの押しつけか。
自分というもの_c0101927_9514684.jpg



伝える気持ちを磨きたい。ただ迫力や元気を伝えるだけじゃない。
見た人がふと動きたくなるような、
最初の一歩を踏み出す、きっかけにできるような、自分の気持ちを磨きたい。
私がガチガチでも、やっとblog記事を書き始めたように、
まず動いてみよう!やってみようと思えるような。伝えられるものを。
自分というもの_c0101927_1134093.jpg



同じ場所で何度も撮っているのに、新鮮で心を打つ、胸を打つ。そんな写真、記事がある。
短いけれど、心を写しとったような素敵な言葉が並び、
何度でもこの方に会いたい気持ちにさせられる。
この人があの景色をみて、伝えたい気持ちは何なのか。

会ってもいないのに、心が通じる人がいる。丹念な描写、丁寧な表現。動きも大胆。
暗い情景の中にもしっかりした希望が見える。

やわらかい空気を表現できる人がいる。
視線の先で将来をみつめ、今にもあふれ出しそうな多彩な好奇心と、こわれそうなやさしさ。
ときに寂しさが、その間をいったりきたりしてる。

みんなしっかり伝えてるのに。
そんな素敵な人たちに、何を伝え、表現できているか。
自分というもの_c0101927_111992.jpg



日の出の時間になっても、太陽は現れなかった。空はほのかに染まり、
空気をかく独特のエンジン音とともに、ゆっくり通り過ぎていく。
自分というもの_c0101927_1430100.jpg



この飛行機を撮るために8時間ここにいた。
本当はまったく違うアングルだったけれど、ここを飛行機がとおり、どう進んでいくか。
それはピタリとあっていた。
眠っていない体が、すこし鎮まってきた。構図をとりやすいアングルではあるが。
自分というもの_c0101927_1181256.jpg

目的の飛行機は通り過ぎた。8時間眠くなれない自分がいた。


次の日、また私は、息子と羽田の2タミデッキに立っていた。 
息子は、昨日のBAの写真をみて、一言いいんじゃんと言った。
200mm画角になるFA★200が、異常に軽く感じる。でもこれも事実なんだ。
苦しんだ次の日は、大概拍子抜けになる。

うすっぺらい気持ちで、ふと横をみやると、
黒いスーツに身を包み、硬い表情で離陸機を見つめる小柄な女性が一人。。面接帰りの学生?

みているとあとからきた家族にベビーカーが見やすい席を作って、自分は後ろに下がっていく。
満面の笑顔で、身振り手振りで彼女は何かを説明しはじめた。 その先にはディズニーランド。
でも今日は霞で見えない。
家族があいさつをして立ち去り、彼女は元の位置へ戻る。そこは離陸ポイント。

次の飛行機をまえに場所を移動して、上がった飛行機に私は、シャッターを3回くらい。
ふと横を見ると。さっきまでメモをみていた、その彼女はもういなかった。

それは幻でしょう?。。。ある人にさっきそう言われたのだけれど、そんなはずは。。。

あるかもしれない。 以前、ここで見た人の笑顔とダブったかも。。。
その人も、とても笑顔が素敵な人だった。 自分は、それを伝えられただろうか。。。。

2011/6/3-4撮影 RAW:PENTAX K-5 / FA★300mm F2.8 (一部三脚使用)
by qchan1531 | 2011-06-05 16:39
<< Airbus A380 Airbus A300-600R >>